日本の一般自転車に多く採用されているタイヤバルブは【英式バルブ】【イギリス式バルブ】【ダンロップバルブ】と呼ばれています。その名の通りダンロップが1800年代後期に空気入りタイヤを開発した時に作られたバルブで当時の英国車に採用されていました。日本の自転車文化は英国車の輸入から始まっていることもあり、一般自転車タイヤのバルブはこの英式バルブ、タイヤのサイズ呼称はインチxインチが主流です。

さてパンク原因の本題です

この英式バルブの中には虫ゴムと呼ばれる細いゴム管があり、このゴム管で入れた空気の逆流を防いでいます。

ゴム管を外したのが右側で、バルブ中央あたりの穴を隠すことにより空気の逆流を防ぐ構造です。ですが、通しただけのゴム管は空気を入れた時に膨らんで外れやすくなります。そこで外れないように穴の少し上にある広がった部分をチューブバルブ内側に押し付けてゴム管外れを防いでいるのです。実はこの膨らみ部分が空気漏れの原因になりやすい箇所。

こちらが空気漏れの早くなったバルブです。よくみると膨らみの部分のゴム管が切れてますよね。空気入れで収縮を繰り返したゴムはもともと薄い事もあり、この押し付けられた膨らみ部分で切れてくるのです。これがパンクの序章で入れたはずの空気はゆっくりとバルブから外に漏れていきすぐにタイヤは空気圧不足に。空気漏れが早くなって柔らかくなったタイヤでもこげば走るので乗り手は「タイヤ重いなー、でもこの前空気入れたばっかりだしな、仕事で疲れたからだな~」とか思いながら走ってるかもしれません。近年主流のアシスト自転車は空気圧不足を感じさせないアシスト力があるので余計被害に合いやすい。そしてこの灼熱の夏はゴムが溶けやすく、修理現場では毎日毎日パンク対応、バルブ交換で、タイヤ修理のほとんどはこの空気漏れトラブルに起因しているのが実情なのです。つまり異物刺さったパンクはとても少ない。

このゴム管は1年に一回は交換したほうが良いのですが定期的に交換する人はなかなかいません。よって、空気少ない状態で走っている方が世の中とても多く、タイヤ本来の寿命よりかなり早い段階にチューブは内部摩擦ですり減り薄くなり穴があいてボロボロになり、タイヤはひび割れ割けてしまう。これが一番多いパンクトラブルの正体です。もちろんゴム管を定期的交換している人の自転車はとてもタイヤ寿命が長いのは間違いありません。

このバルブのトラブルはそれだけではありません。このバルブを止めているネジ部分は使用しているうちに緩みが発生します。そうすると空気はやはり漏れます。手で締めるネジの為、駐輪場等でこの部分だけ取られ空気を抜かれて走れなくされてしまうというのもイタズラで昔からあります。

こんな話を聞いてるとそんな面倒なバルブをよく世界中で使ってるなと思いますよね。実は140年以上の歴史を持つこの英式バルブを自転車で使っている国は現在ほぼ日本くらいと言われています。自転車バルブには【英式バルブ】【仏式バルブ】【米式バルブ】の3種類ありますが、他国の主流はほぼ【米式バルブ】と【仏式バルブ】の2種類。毎日使うような一般自転車にはほとんど【米式バルブ】が使われているのがワールドスタンダードで、国によっては日本に来て初めて見るバルブかもしれません。もはやガラパゴスバルブ・・・。

これが【米式バルブ】【アメリカンバルブ】とも呼ばれます。自動車やバイク、サスペンションなど空気充填をするあらゆる分野において世界一般的に使われているバルブで、空気入れが簡単、空気漏れが少ない、どこでも入れやすいというメリットがあります。なんならガソリンスタンドでも・・・

もちろん日本でも見かけます。10万円以下のマウンテンバイクや欧米系ブランドのシティーサイクルやクロスバイク、欧米系ブランドの子供自転車ならほぼ100%このバルブなので実はとっても身近なバルブなのです。これは虫ゴムというもの自体が無いので空気漏れが少なく長寿命。バルブネジが無いので緩んで漏れが早くなるや、バルブを取られるイタズラにも会いません。空気圧の計測も簡単です。

そこで提案ですが、今乗っている自転車のチューブをこの【米式バルブ】チューブに交換しませんか。一般自転車でもこのバルブを使用したほうが虫ゴム原因パンクに悩まされることも無くなります。空気入れが心配というのもあると思いますが、当店店頭のコンプレッサーで入れている方はそのまま入れられます。ちなみに今市販されている空気入れのほとんどはこのバルブに対応してますのでお手持ちのポンプを確認してみてください。

定期的に空気補充していればきっと修理代の軽減につながると思います。

一般自転車も最初から米式バルブがついていれば虫ゴムパンクはとても少なくなるんですがね、なぜか英式バルブから逃れられない自転車メーカー。新しくもないのに新しいことに切り替えられないのが販売側としても寂しく思います。

ご希望の方はタイヤ交換、チューブ交換の際に是非【アメリカンバルブ】【米式バルブ】でお願いします。とお伝えください。

セオサイクル鮫洲店

沼尾